パイプのメッキとは?無電解ニッケルメッキと電気メッキとの違いを解説

「長いパイプにメッキをしたいが、槽に入らないと断られた」「外面はきれいなのに、内面にうまく付いていない」。パイプのメッキでは、このような悩みをよくお伺いします。
パイプは筒状で内側に電気や液が届きにくく、長さがあるほど取り扱いも難しくなるためです。
本記事では、パイプにメッキをする目的から、内面処理が難しい理由、内面にメッキする方法、無電解ニッケルメッキと電気メッキの違い、パイプのメッキ依頼をする際に気を付けるべき点を解説します!
パイプのメッキとは?受託加工で対応できる範囲
パイプのメッキとは、金属製のパイプの外面や内面に金属の皮膜を形成し、防錆性や耐摩耗性などの機能を加える表面処理のことです。
パイプにメッキをする主な目的
パイプにメッキをする目的は、主に次の3つです。
- 防錆・耐食性の向上:鉄系のパイプは、そのままでは水分や薬品で錆びやすくなります。皮膜で素材を覆うことで、腐食の進行を抑えます。
- 耐摩耗性の向上:摺動部やガイドとして使うパイプでは、表面の硬さが寿命に影響します。硬い皮膜を付けることで、摩耗を抑えられます。
- 内部を流れる流体への対策:配管やノズルとして使うパイプでは、内面が流体に直接触れます。内面の腐食や付着を防ぐために、内面まで処理したいという要望があります。
特に3つ目の目的では、外面だけでなく内面にも皮膜が必要であり、パイプのメッキならではの難しさがあります。
メッキ済みパイプ材の購入と受託メッキの違い
メッキ済みのパイプ材は、規格の寸法で量産されたものを購入する方法です。
手軽に入手できる反面、長さや径、材質、膜厚は既製品の範囲から選ぶことになります。
一方、受託のメッキは、加工済みのパイプや特注の長尺品に、用途に合わせた条件でメッキを施す方法です。膜厚の指定、内面を含めた処理範囲、ねじ部のマスキングなど、図面に合わせた仕様で依頼できます。
| 比較項目 | メッキ済みパイプ材の購入 | 受託メッキ |
|---|---|---|
| 寸法・長さ | 規格品から選ぶ | 加工済み品・特注品に対応 |
| 膜厚 | 既製品の仕様による | 用途に合わせて指定できる |
| 処理範囲 | 既製品の仕様による | 内面・外面・部分処理を指定できる |
| 向いている用途 | 汎用品で足りる場合 | 加工後の部品、長尺品、特殊仕様 |
加工後に曲げや溶接をしたパイプ、機械部品として仕上げたパイプに処理したい場合は、受託メッキを選ぶことになります。
なぜパイプの内面はメッキが難しいのか?
パイプの内面が難しいのは、筒の内側に電流や新しいメッキ液が届きにくく、発生したガスも抜けにくいためです。長尺になると、取り扱いそのものの難しさも加わります。
電気メッキでは内面に電流が届きにくい
電気メッキは、製品を陰極にして電流を流し、金属を析出させる方法です。電流は陽極に近い外面や角に集中しやすく、筒の奥までは届きにくい性質があります。そのため、外面には十分な膜厚が付いても、内面は薄くなったり、奥にほとんど付かなかったりします。
内面にも処理する方法はありますが、専用の工夫が必要です。詳しくは次の章で解説します。
液の入れ替わりとガス溜まりがムラを生む
メッキは、製品の表面でメッキ液が反応することで皮膜が成長します。パイプの内側では液が滞りやすく、反応で成分が消費されても新しい液に入れ替わりにくいため、場所によって膜厚に差が出ます。
さらに、処理中には反応によってガスが発生します。内面にガスの泡が溜まると、その部分に液が触れず、未着やピット(小さな穴)の原因になります。前処理の洗浄液が内側に残った場合も、密着不良につながります。
長さと自重による取り扱いの難しさ
長尺のパイプは、まず槽に入るかどうかが問題になります。槽より長いパイプは処理できないため、分割や設計変更を求められることもあります。
槽に入る場合でも、長い製品は吊り方や支え方によってたわみやすく、液の流れも均一になりにくくなります。つまり長尺パイプでは、設備の大きさと、長物を扱うノウハウの両方が必要です。
パイプ内面のメッキ方法と、無電解ニッケルメッキが向く理由
パイプの内面にメッキする方法は、大きく分けて電気メッキに補助陽極を組み合わせる方法と、無電解ニッケルメッキで処理する方法の2つです。内面まで均一な皮膜を付けたい場合は、無電解ニッケルメッキが有力な選択肢になります。ただし、どんな内径・長さでも処理できるわけではありません。
電気メッキで内面を処理する方法
電気メッキで内面に皮膜を付けるには、パイプの中に補助陽極と呼ばれる電極を通し、内側からも電流を流します。内面と電極の距離を近づけることで、奥まで電流が届くようにする方法です。
ただし、パイプの中心に電極を正確に保持する治具が必要になり、細いパイプや長いパイプでは電極を通すこと自体が難しくなります。曲がったパイプでは、さらに適用が難しくなります。内径が大きく、形状が単純な直管に向く方法といえます。
無電解ニッケルメッキで内面を処理する方法
無電解ニッケルメッキは、電気を使わず、メッキ液に含まれる還元剤の化学反応によってニッケルとリンの合金皮膜を形成する方法です。
なぜ内面に向いているのか。電流の分布に左右されず、液が触れている箇所ではどこでも反応が進むからです。電気メッキのように外面や角だけ厚くなることが起こりにくく、パイプの内径やねじ溝にも均一な厚みで皮膜を付けられます。
無電解ニッケルメッキの原理や特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>無電解ニッケルメッキとは?原理や特徴、メリット・デメリットから用途まで徹底解説
電気メッキと無電解ニッケルメッキの違い
パイプの電気メッキと無電解ニッケルメッキの主な違いを表にまとめました。
| 比較項目 | 電気メッキ(電気ニッケルなど) | 無電解ニッケルメッキ |
|---|---|---|
| 皮膜ができる仕組み | 電流による析出 | 還元剤による化学反応 |
| 内面への付きまわり | 電流が届きにくく、薄くなりやすい | 液が触れれば皮膜が形成される |
| 膜厚の均一性 | 外面・角が厚くなりやすい | 形状による差が出にくい |
| 硬さ | 皮膜の種類による | 処理後で約HV530前後、熱処理で最大HV1000以上 |
| 寸法への影響 | 膜厚差を見込んだ設計が必要 | 膜厚分だけ均一に寸法が変わる |
※無電解ニッケルメッキの硬さは、当社の標準的な条件によるものです。熱処理は通常200〜400℃程度で行うため、素材によっては条件の調整が必要です。
無電解ニッケルメッキのメリット・デメリットは、こちらで詳しく解説しています。
パイプのメッキ依頼をする際に気を付けるべき点
無電解ニッケルメッキでも、内径に対して長さが極端に長いパイプでは、液の入れ替わりやガスの抜けが不十分になりやすくなります。前の章で触れた液とガスの問題は、工法を変えても完全にはなくなりません。そのため、細く長いパイプの内面処理は、液の循環のさせ方や製品の向き、処理時間の管理といった現場のノウハウに左右されます。可否は内径・長さ・形状の組み合わせで変わるため、図面を見たうえで判断するのが確実です。
依頼先の槽サイズと対応範囲
長尺パイプでは、依頼先の槽の大きさが最初の条件になります。ただし、槽の長さと同じ長さのパイプがそのまま処理できるとは限りません。製品を吊る治具や液面との関係で、処理できる寸法は槽より小さくなる場合があります。
槽の寸法に加えて、長物や内面処理の実績、材質ごとの前処理の対応範囲も確認しておくと、「引き受けたが内面に付かなかった」という事態を避けやすくなります。

KSTの長尺・大型無電解ニッケルメッキの3つの特徴
ここまで見てきたとおり、長尺パイプのメッキには、長物が入る設備と、内面や厚膜を安定させる液管理の両方が必要です。当社KSTは、その両方を強みとしています。
➊最長8,000mmの長尺槽と3,000mm角の大型槽
当社は、長尺製品は最長8,000mm、大型製品は3,000×3,000×900mmまでの槽を備えています。長いパイプや大型の部品を分割せずに処理できる可能性が広がります。
実際に処理できる寸法は、製品の形状や吊り方によって変わります。当社の槽で難しい場合でも、協力会社での対応や、形状に合わせた特殊対応を検討いたします。
| 対応区分 | 槽のサイズ |
|---|---|
| 長尺製品 | 最長8,000mm |
| 大型製品 | 3,000×3,000×900mm |
➋液管理と工程の見直しで内径の付きまわりに対応
内面の付きまわりは、工法を選ぶだけでは解決しません。だからこそ当社では、製品の形状に合わせてメッキ液や工程の条件を見直すことを重視しています。
後ほど事例でご紹介するように、ステンレス部品の内径でメッキが剥がれていた案件では、ストライクニッケルの条件をメッキ液から見直し、試作を重ねて最適な条件を見つけました。素材は鉄鋼、アルミ合金、ステンレス、銅・真鍮のほか、他社で断られやすい鋳物にも対応しています。
➌1μm単位の膜厚指定と厚膜への対応
当社の標準膜厚は5〜10μmですが、1μm単位での膜厚指定も承っています。内径にほかの部品を組み合わせるパイプなど、寸法精度が求められる製品にも対応します。
用途によっては厚い皮膜が必要な場合もあります。当社では60μmという厚膜を指定どおりに施工した実績があります。ねじ部やはめあい部など、皮膜を付けたくない箇所のマスキングにも対応しています。
当社の処理事例をご紹介!
SUSチューブ材 無電解ニッケルメッキ

産業用機械の配管等に使用されるSUS304製チューブ材への無電解ニッケル処理のご相談でした。
ステンレス鋼は表面に強固な酸化皮膜を持つため、密着性を確保するには下地にストライクニッケル処理を施す必要がありますが、チューブ形状は内径への付きまわりが非常に難しく、他社では内面のメッキ剥がれが発生していました。
>>事例の詳細はこちら
よくある質問
Q. 何mまでのパイプに対応できますか?
A. 長尺製品は最長8,000mmの槽で対応しています。実際の処理可否は形状や吊り方で変わるため、図面をお送りください。
Q. ステンレスのパイプにもメッキできますか?
A. 対応しています。ステンレスは密着性の確保が重要なため、内面も含めて前処理の条件を調整します。
Q. ねじ部など一部だけメッキを避けられますか?
A. マスキング処理で対応できます。ねじ部や公差部など、図面の指示に合わせて施工します。
無電解ニッケルなら長尺・大型無電解ニッケルメッキ.comへお任せ!
超大型部品や長尺部品の金属表面処理でお困りの際は、KST株式会社が運営する「長尺・大型無電解ニッケルメッキ.com」へぜひお任せください。当社は茨城県取手市に日本有数の大型メッキ槽を保有しており、パンフレットの画像にも掲載されている最長8000mmの長尺部品や、3000mm角の超大型部品、さらには重量5トンまでの大物部品のメッキに幅広く対応しております。単に大型メッキ加工の受託を行うだけでなく、受入時の徹底した検査体制や、キズ・打痕の自社での修正サービスなど、製造業でありながらサービス業としての細やかな対応を提供しております。高精度な1ミクロン精度の膜厚管理と、環境に配慮した無電解ニッケルメッキを通じて、お客様の未来のモノづくりを全力でサポートいたします。